活動報告

磁性材料の表面組織観察および磁気冷却効果

材料工学科3年
石橋遼一/太田智敬/管野康平/齋藤卓也/櫻井香織/佐藤純平/猿舘東右子/菅井 創/沼田 隼/早木光流

目的

私たちが普段使っている家電製品などには、モーターやスピーカーなどがあり、そこには磁石が用いられている。班で磁石について調べた結果、 磁石には数種類あることが分かり、その中で磁力が最も強力な磁石がネオジム磁石だと分かった。また、モーターに使われている磁石をネオジム磁石に置き換えると、効率が上がり、エネルギー使用量も削減できることからCO2排出抑制に繋がることが分かった。
今回はその点に注目し、ネオジム磁石と産業分野で広く使われているフェライト磁石の二つの磁石について組織観察と成分調査を行い、その応用例として磁気冷凍の実験を行った。

組織・成分観察結果

加熱して消磁したフェライト磁石とネオジム磁石を研磨しX線蛍光分析顕微鏡で表面観察を行った。その観察結果を示したものが下の図である。
これら試料について、磁気熱量効果を測定した。

図1:フェライト磁石の表面組織(200倍)
酸化鉄を主成分としているため、黒色の割合が多い。

表1:フェライト磁石成分の質量濃度と原子数濃度
元素 質量濃度[%] 原子数濃度[%]
Fe 86.84 93.72
Ba 10.97 4.82
Rh 1.38 0.81
Sr 0.57 0.40
Mn 0.24 0.26

図2:ネオジム磁石の表面組織(200倍)
灰色に見える層が、主層のNd2Fe14Bである。白色がNdを含んだ層で、黒色が空孔である。

表2:ネオジム磁石成分の質量濃度と原子数濃度
元素 質量濃度[%] 原子数濃度[%]
Fe 62.74 81.07
Nd 35.79 17.91
Rh 0.99 0.69
W 0.19 0.08
Nb 0.13 0.10

磁気熱量効果の原理

磁性体は原子サイズでみると、自発的に磁気を発生する電子スピンの集合体である。
常温で電子スピンのNS極の向きが乱雑な磁性体に磁場を印加すると、向きがそろい低エントロピー状態になり発熱する。これを断熱状態で素早く磁場を取り除くと、乱雑な状態に戻り吸熱する。
このように、磁場の変化による磁性体の温度の変化を「磁気熱量効果」といい、このサイクルを繰り返して冷凍を行うのが「磁気冷凍」である。

磁気冷凍のメリットデメリット

  • メリット
    1. フロンなどの冷媒を使用しないので環境負荷を小さくすることができる
    2. 圧縮機が不要であり、気体の圧縮・膨張での損失がないので省エネを図ることができる
    3. 現状の気体冷凍方式よりも効率がいい冷凍が可能である
  • デメリット
    1. 製造にレアアースを使用するため、大量生産を図ることができない
    2. 渦電流によるジル熱によて冷凍損失が大きくなってしまう

磁気冷凍の実験

今回、上記の効果を確かめるため、簡易の磁気冷凍の実験を行った。

  • 実験方法
    • 今回の観察実験で用いたフェライト磁石、ネオジム磁石を使用。
    • 試料振動型磁力計によって磁石に-2.0〜2.0Tの磁界を印加する。
    • アルメル-クロメルの熱電対を用いて0.20Tごとの起電力を測定する。
    • 表を用いて、測定した起電力から温度変化を読み取った。

実験結果

今回の実験は、上記のように磁場を印加したところ表3に示すような結果になった。
ネオジム磁石・フェライト磁石の両方とも温度が低下したことが分かる。0.20Tごとに印可する磁界を変化させたが、そのたびの起電力は0.000〜0.001mVほどの変化だった。しかし最大起電力の付近でのその変化は大きいという結果になった。

表3:磁気熱量効果による起電力と温度変化
  最大起電力 [mV] 最小起電力 [mV] 温度変化 [℃]
ネオジム磁石 0.912 0.898 -0.350
フェライト磁石 0.896 0.889 -0.175

考察

今回は1サイクルでこれだけ温度が低下したので、もっとサイクルを増やせばさらに温度が低下すると思われる。また、断熱材などを使用したりせずに空気中で実験を行ったため、空気の影響をうけ温度変化が妨げられてしまったことも考えられる。また、実験に使用した試料がとても小さかったので、十分な大きさの試料を用いていたのであればもっと温度が下がったはずであると考えられる。

ネオジム磁石の方がフェライト磁石よりも磁力が強いため、より大きな磁気熱量効果が得られ温度変化が大きくなったと思われる。

より大きな磁性体を用い、さらにサイクルを増やすことで、より効率的な冷凍法として利用することが期待できる。