活動報告

身近に潜む有害物質〜身近な物の成分をX線で分析してみよう〜

秋元裕太/斉藤由依/氏家智美/佐藤匠/大阪悠平/志賀直仁/加藤くるみ/高橋愛/小林一貴/西村啓

目的

身近な物に潜んでいる有害物質が、RoHS指令によって規制された。これに基づきRoHS指令前後の身近な物の成分を調べ、今までどれだけ有害なものが私たちの生活に関与していたのかを実験することにした。特に今回は、RoHS指令前後のハブと延長コードをそれぞれ比較した。

RoHS

RoHS指令とは、2006年7月以降に施行された、電気・電子機器に含まれる危険物質を規定し、物質の使用を禁止する指令のことである。指定された物質は、鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、ポリ臭化ビフェニール、ポリ臭化ジフェニルエーテルである。

表1:RoHS指令の規制物質について
成分名 基準値 人体に与える影響
鉛(Pb) 1000ppm以下 四肢の麻痺、貧血 等
水銀(Hg) 1000ppm以下 て気腫 、腎障害 等
カドミウム(Cd) 100ppm以下 肺気腫、腎障害 等
六価クロム(Cr6+) 1000ppm以下 気管支炎、肺がん 等
ポリ臭化ビフェニール(PBB) 1000ppm以下 奇形性 等
ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE) 1000ppm以下 奇形性 等

1.ハブの比較

実験方法

RoHS指令前後の電子機器に含まれる成分をX線分析顕微鏡を用いて分析する。X線源には、RhをターゲットしたX線管球を使用しており、Rhから放出される連続X線を用いて分析を行う。

実験結果

図1 古いハブの全体図

図2 Pb,Br,Cuのマッピングの結果

上の図1、図2は古いハブの測定結果を画像で表したものである。図2から見てわかる通りCuとBrはハブの基盤全体から検出され、Pbははんだ付けされた部分から少量ではあるが検出された。このうちPbはRoHS指令に指定されている。

図3 新しいハブの全体図

図4 Pb,Br,Cuのマッピングの結果

上の図3、図4は現在作られているハブの測定結果を画像で表したものである。図4から見てわかる通りCuはハブの基盤全体から検出され、Snははんだ付けされた部分から少量検出された。 RoHS指令に指定されているPbは検出されなかった。

まとめ

古いハブと新しいハブを比較すると、古いハブからは少量ではあるが検出され、新しいハブからはPbが検出されなかった。上にも記したがPbはRoHS指令に指定されているため、RoHS指令前後で、使用される材料も変化したと考えられる。

2.延長コードの比較

実験方法

RoHS指令前後の電子機器に含まれる成分をX線分析顕微鏡を用いて分析する。補足として、試料を加熱して灰にしたものを酸で溶解し、その酸溶液を分析評価して、含まれているPbの濃度を測定した(原子吸光)。

実験結果

図5 古い延長コード

図6 Pb,Ca,Clのマッピングの結果

上の図5、6は、古い延長コードの測定結果を画像で表したものである。図6から、コードの被膜の部分からPbが検出された。この延長コードを原子吸光で測定した結果、Pbが900.48ppm含まれていることが分かった。これはRoHS指令の基準内であるが、Pbが多く含まれているといえる。

図7 新しい延長コード

図8  Pb,Ca,Clのマッピングの結果

上の図7、8は、新しい延長コードの測定結果を画像で表したものである。図8から、コードの被膜の部分からはPbは微量にしか検出されなかった。この延長コードを原子吸光で測定した結果、Pbが0.107ppm含まれていることが分かった。これはRoHS指令の基準と比べれば、ほとんど含まれてないとえる。

まとめ

古い延長コードと新しい延長コードを比較すると、古い延長コードからも、新しい延長コードからもPbが検出された。しかし原子吸光でPbの濃度を調べた結果、新しい延長コードは古い延長コードに比べPbの濃度が非常に少ないことがわかった。この結果から、延長コードもハブと同様にRoHS指令前後で、使用される材料も変化したと考えられる。

全体の考察

今回の実験から、RoHS指令前後で今まではんだやコードの被膜に使われていたPbが別の材料に変わったことが分かった。このことから、有害な物質への意識が変わったことが言える。

今回はPbしか調べることができなかったが、次の機会にはほかの物質も調べたいと思う。ほかにも、Pbの代わりに使用された材料なども調べたいと思う。