活動報告

動画分析ソフト“ダートフィッシュ”を用いた運動学習教材の開発
―バレーボールの場合―

佐藤卓/佐藤龍人/布施将武/佐藤元/遠藤卓人/大内拓/眞木栞

目的

球技にはそれぞれのルール[1] やプレイングシステム[1] があり、それを理解し実際に行えなければプレーすることが難しい。バレーボールの場合、「ローテーションとポジション」に関することと、インプレー中に「どのポジションの選手がどのように動いているか」などに関する教材・学習方法が少なく、学習するのが困難[3]である。また、点数をとるために有効な技能である「スパイク」の動作習得に関する教材も、連続写真[4],[5] や動画を用いたもの[4] があるものの、ただVTR を再生して動作を見ただけ技能習得するのは難しいと思われる。

そこで今回は、株式会社ダートフィッシュ・ジャパンの動作分析ソフト「ダートフィッシュ(Dartfish Japan Co.,Ltd.)」を使用し、より分かりやすい、新しい動画教材を製作する。

ダートフィッシュとは?DARTFISH

ダートフィッシュ・ソフトウェアはスイスのダートフィッシュ社が開発した動作分析などのコーチング支援およびデータ分析ソフトウェアである。ダートフィッシュには以下の動画分析機能がある。今回はそれらを用いて動画を編集、制作している。

4つの機能と動作紹介
アナライザー機能 テキストや日付・時間の表示、水平・垂直などの補助線の表示だけでなく、距離や角度を画面上に表示できる他にも、様々な分析ツール を搭載しているので、多角的かつ効果的な分析ができる。
ストロモーション機能 動作の一連の流れを残像(軌跡)として画面上に表示することができる。
インジアクション機能 映像をIEEE1394(iLINK)やコンバーターなどを経由して接続されたPC に直接記録でき、遅延表示機能(ライブディレイ)を用いて 画面上に数秒遅れでライブ映像の表示させられる。また、セルフトレーニングなどのリモコンを使うことで離れた場所からの操作もできる。
サイマルカム機能 違う動画をシンクロさせて動作の何が違うのか比較することができる。

実際の作成動画

下記の図は仙台高専男子バレーボール部の試合, および練習中の録画データを編集したものである。

1.ポジション別の動き

図1 ゲームにおける動きの動画

ゲームにおいて、ポジションごとに選手がどのように動くのかを見せる動画として、実際の試合の映像から、動きを見たい人物のみを抽出し、一連の動きをスロモーション機能で残像を残して動画を制作した。

図1 は、FOH(front outside hitter) とFMB(front middle blocker)のスパイクへの入り方部分の動画から抜き取った図である。セッターがトスを上げ終えてFOH がスパイクを打った瞬間を示している。このときFMB はすでに着地してフォローに向かっているといった細やかな動きが分かりやすく確認できる。

2.サイマルカム機能を用いた重ね合わせ動画

図3 改善前のスパイクフォーム

図4 改善後のスパイクフォーム

図5 二つのフォーム重ね合わせ映像

図3 は、改善前の動画を表している図4 は、改善後の動作を表している。通常ビデオから自分のフォームの修正をみるのは、それぞれの動作を別の動画でみることになり、改善 されたかどうかを判断するのが難しい。

そこで、図5 のように同一画面に両動画を重ね合わせることで違いを容易に把握できる動画を作った。視覚情報から改善具合を取り入れることで具体 的にイメージできるので、運動学習を効率よく行えると考えられる。

3.スパイクの動作解説動画

図6 はストロモーション機能により、スパイクの動作を局面ごとに残像を残し、スパイクのインパクトの瞬間をわかりやすくしたものである。このパネル上では静止画としてしか表現できないが、実際は「動画として連続した動きを再生しながら残像を残す」といったものなので、前例の静止画のみ、動画のみの教材よりわかりやすく解説することができ、動きをイメージするのに役立つと考えられる。

動きの解説としては、助走、ジャンプ、スパイク(インパクト)、着地の4 種に分けられる。アナライザー機能の、すでに撮影された映像から距離・角度などを測る機能と、一部を拡大編集で きる機能などを活用し、その都度、修正したい動作に学習者の意識を向けることが可能になると考えられる。

まとめ

動画分析ソフト、ダートフィッシュは、多くの機能を搭載しており、操作が複雑であるが、多様性があるため、バレーボールに限らず、球技のほか、陸上競技や水泳など多様な競技に使用できる。教材動画のバリエーションはアイデア次第で豊富にすることが可能である。

今回は、教材の材料になる映像の録画と、ダートフィッシュによる編集、教材動画の制作の段階で終わっている。今後の課題として、これから出来上がった動画を、ホームページあるいはe- ラーニングシステムのBlackBordにアップするなどして、いつでも動画を閲覧することができる状態にすることで、「自宅でも運動学習ができる動画教材ページ」として教材製作必要がある。
また、運動技能の習得にこのような教材を用いた場合と従来の方法を用いた場合どのような差が生まれるか比較検討し、よりわかりやすい教材を継続的に作成する予 定である。
後期の第3 学年保健体育のバレーボールの単元で実際にこの教材を使用することを計画している。

参考文献
[1]「6人制バレーボールのルールと用語の紹介サイト」 “6人制バレーのルール” ローテーションとポジション頁http://www.sports-rule.com/volley6/index.html(2010 10/19)
[2] バレーボール ルールクイズ http://www.volleyball.gr.jp/cgi-bin/qindex.cgi (2010 10/19)
[3] 市村 哲, 中村 亮太, 井上 亮文 “スポーツ学習のためのマルチメディア強調学習システム” 社団法人 情報処理学会研究報告,2009-GN-70,7-12
[4] 小野塚 徹, 高橋 宏文,横沢 民男,宮口 宏 “スパイク動作に関する一考察 −より強いスパイクを打つための動作について−” バレーボール研究第10 巻, 第1号,June 2008,14-19