活動報告

夏場の暑さに負けないスポーツドリンクの開発

佐藤卓/佐藤龍人/布施将武/佐藤元/遠藤卓人/大内拓/眞木栞

目的

近年、温暖化の影響により気温が上昇傾向にあり[1]、2011 年8 月には、30℃を超える日が13日間あった。
本来、気温が高い日の激しい運動は、日本体育協会(2004)が示しているWBGT(湿球黒球温度)によれば25 〜 28度(気温28 〜 31℃)の時は、熱中症の危険が増すので、積極的に休息をとり、水分を補給する。激しい運動では、30分おきくらいに休息をとることが推奨されている。28 〜 31 度(気温31 〜 35℃)の時は、熱中症の危険が高いので激しい運動や持久走など熱負担の大きい運動は避ける。運動する場合には積極的に休息をとり水分補給を行う。体力が低い者、暑さに慣れていない者は運動中止が推奨されている。具体的なWBGT 指標は、表1に示す。

表1 WBGT値における行動基準 / 日本体育協会(1994) 熱中症予防のための運動指針より

しかしながら、日本国内の中学校・高校・高専・大学等、どの学校段階においても気温が高くても課外クラブ活動は日常的に行われているのが現状である。このような状況下、少しでも安全に運動を行うために、熱中症対策に充分な水分補給を行う必要がある。
市場では、多様なスポーツドリンク等が販売され、教育現場でも用いられている。しかしながら、各スポーツドリンクを調べてみると、飲料水に含まれる成分の中で 厚生労働省の基準[2] に達していなかったり、効果的と言われている値[2] と異なったりしている。したがって、成分を改善し、熱中症予防により効果的なスポーツドリンクを提供することが可能であると考えられた。そこで、本研究においては、熱中症予防により効果的なスポーツドリンクを開発し提案することを目的とする。

先行研究及び各省庁のガイドラインより、熱中症予防のための効果的な水分(スポーツドリンク)の成分を調査し、より効果的と考えられるスポーツドリンクを提案する。

調査

ドリンクに必要な4項目

以下の4つの成分は、厚生労働省の基準に記載されている必須成分である。

表2 は、現在市販されているスポーツドリンクの成分である。
これを見ると、A、B、C、D、E、F社製のドリンクはナトリウム含有量が基準に達していない。G、H、I社製ドリンクはナトリウム含有量については全く問題がG、H社製ドリンクは糖分が多すぎ、I社製ドリンクはマグネシウムやカリウムといった、ミネラルを含んでいない。
したがって、上記の条件を満たすスポーツドリンクはないということが分かる。現在、市販されているスポーツドリンクは熱中症対策として飲用するには最適ではない可能性がある。

表2 スポーツドリンクの成分表(100ml あたり)

さらに追加したい5つ目の成分アルブミン

今回私たちが新たに着目したのが「アルブミン」である。アルブミンは小さなタンパク質で、血液中に含まれるタンパク質の約60%を占めている。血管内に水分を保持し、血液量や体内の水分量の調整(血液の浸透圧の維持)する働きがある[4]
運動時の発汗作用の汗は、血液から生じるものであるから、多量に発汗すると血量が減ってしまう。発汗時にアルブミンを摂取すると減った血液を増やし、血量を保持してくれる[4] 暑熱環境下では、皮膚の表面の血流を増やして熱を逃がしているため、血量が多くなれば熱を逃がしやすくなる。このためアルブミンを含んだスポーツドリンクを摂取することは熱中症対策に効果的に働く可能性があると考えられる。

提案

今回の調査から、「ナトリミン」を提案したい。なお、このスポーツドリンクは、先行研 究から考えた理論上の成分を含有するスポーツドリンクであり、今後の課題として、実際 の運動時に、開発したスポーツドリンクを使用した場合とプラセボを使用した場合のパ フォーマンスを比較し効果を検証したい。また、アルブミンの具体的な必要量も現段階で は分かっていないため、検証する予定である。

参考文献
[1] 気象庁,(2011,10/20) 気象統計情報よりhttp://www.jma.go.jp/jma/index.html
[2] 厚生労働省,(2011,10/20) 健康・医療ページ, 熱中症関連情報よりhttp://www.mhlw.go.jp/
[3] 内野美恵, 月刊ドクターズプラザ2008 年11 月号 Vol.56(第2回)スポーツドリンクの摂りすぎに注意!? http://mag.drp.ne.jp/
[4] Bonetti A, Marotti I, Catizone P, Dinelli G,, Tedeschi P, Brandolini V et al,Compared use of HPLC and FZCE for cluster analysis of Triticum spp and for the identification of T.durum adulteration.( 2004 June 30)