活動報告

電気エネルギーを利用した食用野菜の完熟度向上と高密度バイオ燃料化への期待

材料工学科3年
石川正貴/遠藤寛子/小野瑞希/栗原芙由子/齋藤樹/佐藤圭悟/佐藤宏紀/鈴木岳樹/寺嶋慶起/盛晃一

目的

植物に関する多くの記述の中に、「電流を流すことで成長が促進される」というものがあった。実験により、これを証明することが出来れば、植物の成長に関する様々なものに利用することが出来る。今回私たちは、実験における成長の差異を調べ、必要としたエネルギーと本実験の応用方法に注目したいと思う。

実験内容

必要な物品
  • 植物の苗:3つ(成長の早いもの、本実験ではミニトマト)
  • 電源装置
  • 銅版、アルミ板
  • 銅線
  • 糖度計

植物の根元に銅・アルミ板を挿し、電流を流す。成長具合の変化を見るため、かける電流は1A、0.1Aのように強弱をつけ、電流をかけないものの様子と共に観察する。
植物がある程度育ったら、成長の仕方に変化があるかを調べる。今回は、 トマトの糖度を糖時計で調べた。

実験結果

実験で得られた結果を表1に示す。電流を流していないトマトの糖度が5〜6%であるのに対して、電流を流したトマトは、糖度が7〜8%と高いことが分かった。一般的に、高級トマトの糖度が7以上であるといわれているため、違いは歴然だろう。

また、下の写真は電流の有無以外同じ条件下で育てたミニトマトである。電流を流したほうは実が熟しているのに対して、電流を流していない方の実はまだ青い状態である。このように、植物への電流の有無は実の完熟度の違いへも繋がることが分かった。

表1 電流の大きさと糖度の変化
電流[A] 糖度(最大)[%] 糖度(平均)[%]
0.0 6.3 5.8
0.1 7.2 6.9
1.0 8.1 7.6

(a) 電流を流したもの(1A)

(b) 電流無し

この違いは、主に電流による植物の細胞の変化によるものだと考えられる。植物の細胞は、微量の電流を流すことで細胞のはたらきが活性化する。細胞の活性化とは、細胞の数が増えるということに繋がるため、電流を流した植物は大きくなるのが早くなる。今回の実験で見られたミニトマトの成長速度の違いには、以上の理由があるのではないかと考えられる。

まとめ

本実験では、植物に電流を流すことでその成長が促進されることの証明ができた。ここで、この特性を実際に活用できるかについて考える。

エネルギー

実際に活用することを考慮したとき、植物の成長の度合いと、それに掛かったエネルギーが釣り合う必要がある。そこで、本実験の使用電力を纏めた(表 2)。植物の成長具合とエネルギーを比較しても、実用は十分可能だということが分かった。また、今回は電源装置を使用したが、これを太陽光発電にかぎすることで、エネルギー効率がより良くな ることに期待できる。

表2 使用電力とその料金
電流[A] 使用電力[W] 料金[円]
0.1 400 6.72
1.0 4000 67.24
高密度バイオ燃料化への期待

本実験で得られた結果は、より密度の高いバイオ燃料の精製に活用できる可能性がある。バイオ燃料とは、生物を資源として作られる燃料のことで、近年石油や石炭のような化石燃料に変わる新たなエネルギーとして注目されている燃料である。化石燃料を消費せず、また、使用しても二酸化炭素の総排出量が増えない(原料の植物が二酸化炭素を取り込むため、理論上の差し引きは0となる)と言われていることから、環境に優しいエネルギーとして実用化に向けて研究が進められている。バイオ燃料は、糖質またはでんぷん質を多く含む作物(トウモロコシやサトウキビなど)を原料とし、これらを発酵させて出来上がった無水エタノールが燃料となる。

ここで本実験での結果を応用すると、原料のトウモロコシやサトウキビに微量の電流を流し、その糖度を高くすることで、より密度の高い燃料を作り出すことが可能となる。燃料を精製する上で、その高密度化の重要性は非常に高く、これが実現すればさらなるバイオ燃料の実用性向上へ近づける手段となりえるだろう。

その他の応用

応用として、上記のバイオ燃料の他に、農業への利用は勿論、限られた環境の中での植物の栽培などに活用できる。例えば日光の届かない屋内での栽培は、光合成に必要な日光がないため、植物は大きく成長せず、実が熟すのも遅い。そこで、植物に電流を流すことでの成長の促進を利用すれば、日光の届かない場所でも変わらずに植物を栽培することが出来る。太陽光エネルギーの代わりに電気エネルギーを使うことで植物を栽培するので、日光が満足に得られない季節や地方での栽培に活用することが出来る。また、地下での植物の栽培が可能となるため、土地の有効利用にも繋がるだろう。