活動報告

蛍光樹脂含浸による微細ひび割れの可視化に関する検討

會田耕平/梶原一輝/佐藤千鶴
指導教員:権代 由範

本取組の背景と目的

コンクリートは,劣化過程において,乾燥収縮や荷重等の劣化外力を受け,大小様々なひび割れを生じる。このことから,コンクリートの劣化診断を行う上で,ひび割れの評価(ひび割れの幅や長さ・発生要因)は非常に重要な指標として扱われている。しかし,比較的大きなひび割れに関しては,劣化進行の尺度や強度推定に用いられているものの,凍害の初期劣化,つまり,凍結融解作用(注1)により生じる微細ひび割れ - Micro Cracking - については,ひび割れ幅が非常に小さく可視できないため,微・非破壊試験(注2)による間接的な評価が主な評価法となっている。

- パターンひび割れ -

- 長手方向ひび割れ -

- Dひび割れ -

- 剥落・崩壊 -

そこで本取組では,コンクリートの耐久性評価により,構造物の維持管理技術の向上を図るため,肉眼では識別が困難な微細ひび割れを可視化する手法である『蛍光エポキシ樹脂真空含浸法』3)を用い,微細ひび割れの観察による直接的評価の可能性について検討を加える。本取組では,まず,この微細ひび割れの評価手法を実施するために必要なシステム『真空脱泡装置』の製作を行うとともに,本評価手法の最適化を図ることを主な目的としている。

コンクリートの凍害劣化メカニズム

  • 注1) 凍結融解作用:コンクリート中の自由水が凍結と融解を繰り返す作用。この自由水の凍結に伴い水の移動が生じる(凍結水圧や浸透圧による移動が代表的)。この移動圧が緩和されない場合,組織に緩みまたはひび割れを生じる。
  • 注2) 非・微破壊試験:素材や製品を破壊せずに、損傷の有無・存在位置・大きさ・形状・分布等を調べる試験。超音波探傷法,一時共鳴振動数の測定等が挙げられる[JIS Z 2300]

蛍光エポキシ樹脂真空含浸法の概要

蛍光エポキシ樹脂含浸法によるひび割れの可視化プロセスを下の図にまとめた。プロセスの概要としては,まず,試験体(コンクリート)を真空チャンバー内に設置して減圧する。これによりコンクリート中に存在する水分や空気を排除し,その後,蛍光エポキシ樹脂を充填し,真空脱泡によりコンクリート内部へ含浸させる。樹脂含浸後の試験体は,数日間室内に静置して樹脂の硬化を待った後,切断・研磨によって観察面の調整を行う。ここで調整した観察面(試験体の切断・研磨面)に紫外線を照射することによって,微細ひび割れを可視化する。

ひび割れの可視化(プレテスト)

真空脱泡装置の製作に先立ち,本取組で選定した『エポキシ樹脂』および『蛍光染料』の適用性を判断するためプレテストを実施した。プレテストの実施プロセスは,下の図の通りである。

≪ 参考文献≫
1)Powers, T.C.:A working Hypothesis for Further Studies of Frost Resistance of Concrete,Journal of American Concrete Institute,Vol.16,pp.245-272,1945
2)Powers, T.C.:Freezing effects in concrete,Durability of Concrete,ACI SP-47,pp.1-11,1975
3)平間昭信,岡田朋道:蛍光エポキシ樹脂真空含浸法によるコンクリートの劣化現象の可視化,セメント・コンクリート,No.752,2009.10