活動報告

事業の概要および平成22年度の成果報告

仙台高等専門学校・名取キャンパス
建築デザイン学科 小林 仁

1.はじめに

1.1背景

現在,各高専では「創造力のある実践的技術者」の育成に積極的に取組んでいるが,目標通りの人材を十分に育成できているとは言い難い.つまり,「創造力のある実践的技術者」には,単に知識や技術を実際的なことがらにあてはめて活用する能力だけでなく,既知のものを組合せて新しいものを作り出す能力,さらには分野を越えて知識や技術を複合融合させる能力も求められるからである.
確かに,高専の代名詞ともなっている「ロボコン」に代表される各種コンテストや,創造工学系科目では,与えられた課題に対して,分野に囚われず様々なアプローチを組合せて挑む提案もみられるなど,複合融合力が育成されている取組であると考えられる.しかし,これらの取組に参加する学生数は限定的であり,能力が育成されているか如何かを客観的に評価するシステムが整備されていないといえる.
このように,全学的に「創造力のある実践的技術者」の育成を実施し,それを保障する術がないのが現状であると考える.

1.2目的

本事業では,チームラーニング(チームティーチング+グループ学習)によるモノ造型コンテストを実施し,対外的審査結果を基にGPA(Grade Point Average)方式で単位を認定するシステムの構築を行い,制作科目として整備することを目的としている.これにより,全学的に「創造力のある実践的技術者育成」を実施し,評価できる体制整備することに資する事が出来ると考える.
この目的のために,本事業採択期間内には,先ず名取キャンパスを中心として,以下の5項目の実施を目標とする.

  • (1)チームラーニング環境整備(Step1):学科・キャンパス・姉妹校連携による,チームティーチングとグループ学習の実施環境の整備
  • (2)モノ造型コンテスト環境整備(Step2):地域産学官・姉妹校連携による,知識や技術を複合融合させるコンテストの実施環境の整備
  • (3)対外評価環境整備(Step3):地域産学官連携による,学生作品に基づく作品の対外的評価並びに能力育成の対外評価環境の整備
  • (4)GPA方式単位認定環境整備(Step4):教育企画室(教務関連)委員会連携による,外部評価に基づき認定する単位数を決定する環境の整備
  • (5)モノ造り型コンテスト科目整備(Step5):教育企画室委員会との連携による,(1)〜(4)の項目を体系的に行える課外活動型科目の整備

なお,上記の5項目を導入・実施する上で,学内外の協力・連携をとりながら円滑に進める為に,以下の5項目も適宜実施する.

  • (6)教職員対象コンペティション(Pre-step1):各キャンパス全教職員を対象とした高専型教育研究の核となるテーマの提案及び執行部(校長等)による適正なテーマの選定
  • (7)支援体制整備(Pre-step2):管理課等との連携による,選定案への各種支援体制並びに,否選定案の改善への各種援助体制の構築
  • (8)作品展示・発表環境整備(Pre-step3):将来構想委員会・管理課・施設課連携による,コンテスト用の空間・設備等整備
  • (9)教育システム導入支援(Pre-step4):GP経験者をコーディネーターとした,コンテスト・単位認定・評価等の教育システム導入支援
  • (10)教育システム構築支援(Pre-step5):GP等経験者をスーパーバイザーとする,教育システムの構築支援

また,本事業採択期間内の目標として,(6)〜(10)の項目を活用して,本事業に賛同頂けている広瀬キャンパスを中心とした,東北6高専への事業の展開も試みる.
加えて,将来的には,チームラーニングによるモノ造型コンテストと卒業研究との融合を図り,「モノ造りのための研究」を核とした「高専型卒業制作」として,高専機構が主導で認定が可能な高専独自の学士制度の確立に寄与し,全高専で「創造力のある実践的技術者」を育成する体制の実現に資することを目指している.

2.本事業の概要

2.1 事業導入・実施のフロー

本事業では,上記のPre-step1〜5を適宜実施することにより環境整備を行った上で,Step1〜5の流れで教育体制の導入・整備を実施する.

実施環境は,(1)テーマの核となる高専型教育研究に関する学内コンペティションを行い,各校教職員からアイデアを募り,各校執行部が事業に適した案を選定し(Pre-step1),(2)選定された案に対して予算等の支援を行ない,教職員と学生がチームでテーマとしてまとめ(Pre-step2),(3)学内で展示・発表する(Pre-step3)ことを通して整備する.また,(4)コンテスト,単位認定,作品・人材評価等の教育システムは,本校の名取キャンパスがGP等で整備したものを本事業用にカスタマイズして関係者が各校で実演する等の支援を行い導入し(Pre-step4),それを基に,本校のGP等担当者がアドバイス等行い,各校で独自のものへ発展させる(Pre-step5)ことにより整備する.
教育体制の導入・整備は,整備された実施環境を活用して,全学科教職員チームの指導の下に学科や学年を越えた学生チームが自ら設定したテーマに対して,知識や技術を複合融合させた「モノ造り」による解決を提案し(Step1),それをパネルと制作物としてまとめ,対外的なコンテストで実演及び提案を行い(Step2),地域の市民・産学官による評価を基にそれに見合う単位数を与え(Step3),提案作品を基に地域産学官の委員により本事業で育成を目指す能力の評価を行なう(Step4),以上を科目として体系化する(Step5).

2.2 事業展開の流れ

本事業は,名取キャンパス中心に地元(名取市)と名取キャンパスの5学科連携(Stage1)で教育体制を構築した上で,地域(宮城県)と名取・広瀬キャンパス連携(Stage2)へと教育体制を展開し,東北6高専での教育体制の共有(Stage3)への発展へと進める.
将来的には,本事業に賛同頂けている高専への高専型教育研究制作科目の整備を推進し,大学の「研究のための研究」と一線を引く,「モノ造りのための研究」を核とした,モノ造りと研究を両輪とする高専独自の学士制度や規準,高専独自の助成制度へ,本事業で整備を目指す(1)〜(10)の項目が繋がることに期待している.

2.3 特色・工夫

本事業の主な特徴として,実施上の工夫,導入の負荷を減らす工夫,連携・展開を図るための工夫等を以下に示す.

(1)実施上の工夫
  • (1)全科の教職員と学生による課外のチームラーニング形式としたため,作業時間が管理され計画的に進められるとともに,学年・学科・キャンパス・姉妹校間の横断が容易であり,領域を超えた複合・融合の問題を扱え,分野による偏りがない客観的な意見を得られる.
  • (2)問題設定型モノ造コンテストを核とし,教職員の指導の下で,学生チームが自らの能力に見合った取組内容や難易度を設定できるため,学生にとって魅力的であり,多数の参加人数が見込める.
  • (3)コンテスト作品を基にした地域市民・産学官による外部評価(審査,アンケート,売上等)としたため,取組実施期間中にコンテスト等を通して自らの提案に対する生の声が聞けるとともに,能力育成の客観的評価が可能である.
  • (4)外部評価と作業時間数によるGPA方式の単位認定方式とし,努力した分の客観的に評価が得られる為,学生のモチベーションが高まり易くやる気を長期間維持させることが可能である.
  • (5)(卒業研究の一貫として)卒業研究と連携させることが可能な形態とすることにより,将来的には卒業研究と並列の「高専型卒業制作」に容易に移行させられることを意図した実施形態としている.
(2)導入負荷を減らす工夫
  • (6)チームラーニングに関しては,名取キャンパスの本科や専攻科の創造系科目等,既存の実績ある授業を基に継続・発展させる形として整備し,新たなる産みの苦しみを抑える.
  • (7)モノ造コンテストに関しても,名取キャンパスの高専祭で実績ある発明コンテストなど対外的なコンテスト,姉妹校で開催の国際コンテスト・国際ワークショップ等,既存の各種コンテストを基に継続・発展させる形とし,実現性を上げる.
  • (8)対外的評価型・GPA制度に関しても,各種事業で設置している外部評価委員会で既に連携経験のある機関依頼する,GP等で整備している既設の制度を基に発展させる形とするため即時実現が可能である.実際に,地域産官として名取市・県立ガンセンター・商工中金仙台支店などとはすでに提携を結んでいる.
  • (9)制作科目に関しても,建築デザイン学科で実績のある卒業設計,専攻科で実績のある創造工学演習など既存の活動を基にして整備していくため実現性が高い.
  • (10)本取組で必要となる新たなる空間は,高度化再編による学科減で生じる校舎等のスペースを有効に活用することにより捻出するものであり,実施負荷削減に勤めている.
(3)連携・展開を図る上での工夫
  • (11)本事業で構築される教育システムは,「創造力のある実践的技術者」に取組んでいる他の高専なら容易に導入可能であり,その波及効果・改善効果は非常に大きく,研究中心の大学との差別化を図る目玉ともなり,高専ブランドの発信にも繋がるといえる.
  • (12)JABEEにおける学習時間の保障とゆとり教育に伴う学生の能力の多様化が進む中で,内容や単位数が同じである従来の教育方法では,成績が上位の学生にとっては単位の修得は低いハードルとなり向上心を失うのに対し,下位の学生には高いハードルとなり苦しむなど,全ての学生のモチベーションを高めることが困難である.本事業で構築するGPA方式の単位認定では,この高等教育機関共通の問題の解決策の1つと成り得る可能性があり社会的効果は高い.
  • (13)知識や技術が多様化・複合融合化する中で,創造のアプローチの方法は無限であり正解も1つに定まらない為に,従来の高専の「教え込み」方式では,講義や演習を通して方法・事例等をパターン的に修得しても,創造力を育成することは難しい.この能力は,教職員の指導の下で,学生自身が経験し体得すべき能力であり,本取組はこの高専共通の問題解決に資する事ができるため,教育改革的効果も非常に高い.
  • (14)本事業で整備する環境は,GP等で整備した学内のより多くの活動を積極的に取り込み有機的に結合させることにより,申請期間後も継続され,各種GPなど外部資金の獲得に繋がる可能性も高く,改善を継続することを目指す.
  • (15)GP等の全学的取組の経験を生かし,ルールのシンプル化,情報の迅速な共有化により,全学的なコンセンサスを図り,「トップダウンとボトムアップの最適な組合せ」を行いながら,特に実行(Do)で協力頂く現場の教職員の裁量権や自由度を最大限に増やし,ハードルのミニマム化により,「小さく生んで大きく育てる」,「少数の献身的な努力でなく多数の少しの努力を得られるようにする」ことに特に配慮している.
2.4実行組織

実行組織は,(1)本校校長及びコープ教育センター(CEC)による全体の企画[Target ]に沿って(賛同頂く各校試行部の協力を得て)総括され,(2)各校の卒業制作推進員会等が活動の計画[Plan],改善[Action]を担当し,(3)各校の教務委員会等での関連規則や科目整備[Do],学生委員会等での学生活動の管理・支援[Do]を経て,(4)担当教職員チームの下で学生チームが実行[Do]し,(5)各地域産学官が評価[Check]を担当する,全体がPDCAサイクルを成し,各校が独自にTargetに向けてスパイラルアップする体制とする.

3.実施計画

3.1 全体計画

本事業の目標に沿って,事業期間内に以下の21項目の実施を計画している.実施項目は,事業全体の環境整備,名取キャンパス内での教育体制の構築(STAGE1)を行った上で,広瀬キャンパスへの教育体制の展開(STAGE2)と,東北6高専での教育体制の共有(STAGE3)の4つの事業に大別される.

(1)事業全体の環境整備

キャンパス・東北6高専間で事業の展開・共有が円滑・適正に実施できるように,以下の6項目について整備・拡充を計画している.

  1. 高専型教育研究制作関連推進員会
  2. 教職員対象コンペティション選定委員会
  3. 外部評価委員会
  4. コンテスト作品展示・発表用空間・設備
  5. (東北地区)高専型教育研究制作コンテスト
  6. FD(論文発表,講演会,フォーラム等)
(2)教育体制構築/名取キャンパス:STAGE1

チームラーニングによるモノ造型コンテストを基に,対外的審査結果に基づくGPA方式の単位認定を行う,関連科目等の整備のために以下の5項目の整備・改善を計画している.

  1. チームラーニング:Step1
  2. モノ造コンテスト:Step2
  3. GPA方式単位認定:Step3
  4. 人材評価システム:Step4
  5. 関連科目:Step5
(3)教育体制展開/広瀬キャンパス:STAGE2

対外審査によるGPA方式のチームラーニング型モノ造コンテストを他キャンパスに展開するために以下の5項目の準備・試行を計画している.

  1. チームラーニング:Step1
  2. モノ造コンテスト:Step2
  3. GPA方式単位認定:Step3
  4. 人材評価システム:Step4
  5. 関連科目:Step5
(4)教育体制共有/東北6高専:STAGE3

対外審査・GPA方式のチームラーニング型モノ造コンテスト関連の教育体制を東北6高専で共有化するために以下の5項目の実施を計画している.

  1. 教職員対象コンペティション:Pre-step1
  2. 高専型教育研究制作テーマ整備:Pre-step2
  3. モノ造型コンテストへの参加:Pre-step3
  4. 対外GPA方式評価への参加:Pre-step4
  5. 関連教育システムの試行:Pre-step5
3.2 平成22年度の実施事項

22年度には,全体計画に沿って,事業全体の環境整備に関しては(1)〜(4),名取キャンパスにおけるシステム構築(STAGE1)に関しては(1)〜(5),東北6高専におけるシステム共有(STAGE3)に関しては,名取・広瀬キャンパス連携で(1)〜(2)を中心に実施した.
次章以降とくに,STAGE3,STAGE1に関連する事業の進め方と成果について述べる.

4.STAGE3関連事業の進め方と成果

本校が以前に採択されて実行しているGP等の経験を基に,本事業は,トップダウンとボトムアップを適切に組合せ,全学的なコンセンサスを図りながら,特に実行に関る現場の教職員の裁量権や自由度を最大限に増やすことに配慮して事業の導入に向けた環境整備を進めている.
具体的な実施手順は以下に示す通りである.

(1)(選定委員候補の)校長・副校長と個別に,本事業の全体的な枠組み(Target, Plan,Check,Action)を中心に意見を頂き,「包括的」になるように配慮して集約し,執行部のコンセンサスが得られる,よりシンプルなものにブラッシュアップする.

(2)(推進委員候補の)名取キャンパス各科の教職員に個別に本事業の概要(Target, Do)を説明し,興味のある教職員を召集し,チームラーニングによるモノ造型コンテストを進める上での実施上(Do)の疑問点や問題点等についてフリートーク形式で意見を聴きながら,専門領域を横断でき,より負荷が少なく汎用的な実施形態について意見を集約し,現場のコンセンサスを得られる,シンプルなものにブラッシュアップする.

(3)広瀬キャンパスの執行部やGP等経験者へ,本事業の概要(Target, Do)を説明し,本事業へ参加する上で,特にチームラーニングによるモノ造型コンテストを進める上(Do)での疑問点や問題点等についてフリートーク形式で意見を頂きながら,広瀬での現在の活動を生かしながら導入できる形態について意見を集約する.

(4)広瀬キャンパスの遣り方に従って,教育企画室会議(教務)等を通して学内へ事業の周知を依頼する.

(5)事業に参加頂く教職員に,「具体的な全実施事項,選定基準」を明示した上で,両キャンパスの教職員全員約200名(グループ可)を対象にした公募を(軌道に乗るまでは校長等名)行う. 実際に公募で依頼した事項は以下の通り8点である.

  • 「モノ造り」に関するものであること.具体的制作物(ソフトウェアー含)が展示できること.
  • 「複合融合」に関するものであること.異なる専門の学生(他の研究室・科・キャンパス)がチームで参加すること.教職員の方もチームで申請されても構いません.
  • 「高専型教育研究」に関連するものであること.将来性や負荷を考え既存の活動内で実施できるものを推奨します.
  • 本年度の10月29日迄に御送り頂いたものとします.
  • 申請額は,備品を除いた,消耗品費・人件費・旅費で1件100万円程度とします.
  • 参加学生が関連コンテストで展示・プレゼンテーションとデモンストレーションできること
  • 成果物としては展示の為A1版パネルと制作物とし,2年間保存頂きコンテスト・シンポジウム・論文等で必要な際にはお借りできること
  • 申請頂いた案は委員会で審議の上で決めさせて頂きます.応募数に伴い助成額の増減を御願いする場合があります.

申請は下記に示す様に,教職員の負担を鑑みて,A4版1枚に名称・概要・計画・費用を簡潔に記載する形式とした.

表1 申請例

(6)22年度は公募開始が9月末,〆切が10月末と期間が短かったが,両キャンパスより述べ13件(広瀬6件,名取7件)の申請があった.なお,公募に際しては他の事業も形式等を統一して,募集者には出来るだけ両テーマに共通するものを申請頂くように依頼し,採択漏れの削減に努めている.

表2 選定結果

図1 作品例A(名取)

図2 作品例B(広瀬)

(7)本校の校長と副校長2名の計3名を選定委員として,本事業で育成を目指している,複合融合力,独創力,実用力の3項目に関して,相対的に評価して頂き,評価点に従って予算等の支援を行っている.選定結果を表2に示す.
選定漏れの提案者に対しても,評価を通知し,評価が低かった点について伝えた上で,希望者にはテーマを改善する為の調査費を中心に助成している.

(8)支援・助成の手続きや配分は管理課と連携して検討し,より制約を減らし,自由かつ適正に行えるように工夫している.手続きや配分方法に関する疑問や質問に関しては,代表者と会計責任者で話合い対応するともに速やかな執行に向けて,定期的な通知を行っている.

以上のような流れで,事業のキャンパス間連携を図り,今後の事業の展開に向けた環境整備を行っている.

5.STAGE1関連事業の成果

5.1チームラーニング(Step1)およびモノ造型コンテスト(Step2)

名取キャンパスでは,モノ造り型コンテストの既存科目への導入を積極的に図っており,本事業ではそれらの継続および発展を実施している.ここでは材料工学実験について紹介する.
材料工学実験は,材料工学科3年生40名を対象に,材料工学関連の基本実験の応用方法をチームで考案し,アイデアをパネルにまとめて,プレゼンテーションを行ない,それを基に評価する科目であり,平成20年度より,前期1単位で実施している科目である.
具体的には,2年の材料工学実験Tで習得した技術や知識を基に,「材料と環境」をキーワードとして,10名程でチームを組ませ,学生が自らテーマを探し,そのテーマに関する実験とその結果をA1版のパネルとしてまとめ,それを展示・発表するコンテストを科目内で実施している.さらに,作成されたパネルは,高専祭の対外的なコンテストでも展示され評価されている.22年度の実施テーマは以下の4つである.

  • 磁性材料の表面組織観察および磁気冷却効果
  • 宮城県に流れる河川および海,雨水のハロゲン濃度測定
  • 近隣河川領域の鉄鋼地下資源
  • 銅の焼入れ過程の可視化と冷媒の熱伝達率測定

また名取キャンパスでは,GP等の外部評価委員会での意見を受けて,各取組において育成された能力を客観的に評価する手段として,コンテスに基づくGPA方式の科目を導入しており,本事業でも継続と発展を支援している.ここでは総合科目B(環境ビジネスコンテスト)について述べる. 総合科目Bは,本科の3年生以上の600名の内で希望する学生を対象にしており,学生はチームで課外に自主的に環境問題を調査し,解決策をコンテストで提案し,作品・プレゼンテーションの内容が対外的に評価され,それを基に提案毎に1〜2単位が与えられる科目であり,平成20年度より導入されている. 具体的には,学生が3人以上でチームを組み,身近で未解決の環境問題を発掘し,本校で修得した知識や技術を応用して,新規かつ実用的な解決方法を考え,その成果をパネルやモデルなどの作品としてまとめる.その作品を環境ビジネスコンテスト10に出展し,デモンストレーションやプレゼンテーションを行い,当日の参加者や外部評価委員の評価を受ける.それらの評価を基に総合的に判断し,教務委員会でそれに見合う単位の認定が為される. 以下に示すように,22年度は5件の提案が為されている.

  • 電気自動車の改良〜よりエコを目指して〜 −ソーラーパネル搭載ボディーの制作−
  • スマートecoエナジーライフ 野田山エコ発電プロジェクト〜圧電素子を利用したエコ発電〜
  • 遮光によって室温はどのように変化するか?
  • 遮光+蒸散によって室温はどのように変化するか
  • 地震直前の磁界の変化の測定

総合科目の進め方を表3に示す.


図3 学生作品例

説明会において,審査基準,(1)複合融合性,(2)独創性,(3)実用性(ビジネスになるもの)の3点,成績物等が学生に対して周知される.
なお,放課後,休日,休暇期間を活用した選択科目であるため,実施日程は目安であるが,単位申請は個人となるため,各自で実施内容の履歴は残し,その提出が義務づけられている.また,アドバイザー教員もチーム毎に事前に申請可能であるが,専門性や負担等を検討し関連委員会で決定される.

5.2 モノ造型コンテスト(Step2)によるGPA方式の評価(Step3)

22年度は,「環境ビジネスコンテスト10」と称する,(1)総合科目B:環境をテーマとしたパネルや模型を基にしたモノ造型・提案型コンテスト,(2)材料工学実験:「材料と環境」をテーマとする実験を基にしたパネルを用いた提案型コンテスト,の2部門からなるコンテストを,10月30日・31日に本校の高専祭で実施しており,計9チーム約60人が作品を展示している.

図4 環境ビジネスコンテストの様子

この取組みでは,学生チームが作品をブースに展示し,学生自身の作品を用いた1時間のプレゼンテーション時間を2日間設けており,当日の参加者約300人を対象に提案に対する評価アンケートを実施している.なお,当日は本校の姉妹校であるドイツF.F.Bの教職員や学生にも,本取組に参加頂いている. アンケートは,(1)複合融合力が高いもの,(2)独創力が高いもの,(3)実用力が高いもの,の3項目について,最も優れていると思われる作品の記号を付けてもらう形式で実施し,その順位を基に点数化した評価を行っている.
なお,作品の展示に関しては,提案・パネル・模型の数等の制限は設けておらず,各チームに与えられたブース全体で評価してもらう方式としている.

表4 作品の審査結果

審査の結果は,(1)・(2)・(3)の項目ともに作品A,B,C,Dの評価が高いことがわかる.今回設定した評価項目は,本取組で育成を目指す能力に関する項目であり,奇しくもA・B・C・D・Gは4年生チーム,E・F・H・Iチームは3年生チームであり,学年と成績に正の相関が認められる結果となっている.
 これらの審査結果・学生の作品・作業日誌を基に,2月末に開催された教育企画室会議(教務)において,上位のチームには2単位(90時間相当),下位のチームには1単位(45時間相当)の認定が成されている.なお,当日は,教育GP関連(質の高い大学教育プログラム)の総合科目A・B(教材開発コンテスト)に参加した学生への単位認定も併せて行っている.

5.2 提案作品に基づく外部評価により能力育成の評価(Step4)

上記の通り,GP等の人材育成事業においては,目的とする人材が育成されているかどうかを評価するシステムの構築が必要とされている.一般的な評価方法としては,アンケート調査や卒業後の追跡調査が一般的であるが,評価の客観性やタイムラグ等の問題がある.
このため,新たな評価方法試みとして,本校の名取キャンパスではコンテストで提案された総合科目Bの作品を基に,地域産学官の外部評価委員によるアンケート形式の審査を行い,各事業で育成する人材の能力に関して5段階で評価することにより,育成を目指す能力がどの程度育成されているかの評価を試みている.
本事業では,この評価システムを基に事前に達成目標を高専機構へ申告する形式で実施している.事前に申請している評価基準と達成目標を以下に示す.

(1)複合融合力
  1. 単一の知識・技術しか用いていない,
  2. 専門分野内での知識・技術を複合融合している
  3. 各学科内での知識・技術を複合融合している
  4. 学科間での知識・技術を複合融合している
  5. キャンパス・他学間での知識・技術を複合融合している

☆達成目標:2以上

(2)独創力
  1. 同一機構の製品等が存在する
  2. 類似の機構の製品等は存在する
  3. 類似機構の製品等は一般的な市販品には確認できない
  4. 類似機構のアイデアは専門的(知財等)にも確認できない
  5. 特許・実用新案等知財権を得る

☆達成目標:2以上

(3)実用力
  1. アイデアを表現できていない
  2. アイデアをイメージスケッチで表現できている
  3. アイデアを設計図面等で表現できている
  4. アイデアを縮小模型等で表現できている
  5. アイデアを実用品で表現できている

☆達成目標:3以上

審査では,名取市,県立ガンセンター,名取高校より職員を招聘し,環境ビジネスコンテストに出展された学生の作品を基に,上記の3項目に対する評価頂いている.
評価結果は,表4に示すように,1〜5の間に広く分布しており,全体的にみて審査員や作品によるばらつきはあるものの,平均では3項目ともに達成目標を超えていることが解る.

5.3 コンテスト形式制作科目の整備(Step5)

本事業で目指している,チームラーニングによるモノ造型コンテストを行い,対外的審査結果を基にGPA方式で単位を認定するシステムをもつ科目としては,現在までに,名取キャンパスには総合科目A・Bとして計4科目整備されている.

表4 人材育成目標の達成度評価結果

6.終わりに

本報では,平成22年度より2年間の事業として国立高専機構に採択されている「創造力のある実践的技術者育成のための「高専型卒業制作」導入推進」に関する事業の概要,事業計画および平成22年度の主な実施結果について述べている.
下記の工程表に示すように,年度当初予定していた事項は全て実施しており,また当初定めた人材育成目標も達成している.
また,本事業は,当初高専単独で実施することを計画していたが,広瀬キャンパスとの間で事業の連携が進展したため,3章に示したように全体計画を改め,24年度以降に東北6高専の他のキャンパスへの事業展開に向けた,事業の整備も計画に加えている.
23年度は,広瀬キャンパスへの事業の展開を進めるとともに,東北6高専の他キャンパスとの関連事業での連携を進める.
24年度以降は,東北6高専の他キャンパスとの関連事業での展開を進めた上で,「モノ造りのための研究」を核とした「高専型卒業制作」として,機構主導の学士制度の確立を目指すとともに,「創造力のある実践的技術者の育成」に資することに勤める計画である.

表5 事業全体の22年度の全工程表(※画像をクリックすると拡大表示でご覧頂けます。)