活動報告

平成23年度教育研究活動発表概要(仙台名取特別教育研究)

仙台高等専門学校
小林仁/内田龍男/丹野顕/石山純一/櫻井宏/浅田格

1.まえがき

近年,高専は「創造力のある実践的技術者」の育成に取組んできているが,目標通りの能力の育成が全学的に為されているとは言い難い.つまり,創造力のある実践的技術者には,現在各校で実施されている,知識や技術に関する実験・実習やその実用だけで不十分であり,分野を越えて既知のものを組合せで新しいものを作り出す複合融合力も求められる.確かに,「ロボコン」に代表される各種コンテストや創造工学系の科目では,与えられた課題に対して分野を超えて様々なアプローチで挑む提案も認められ,複合融合力が育成されていると考えられるが,参加学生は限定されており,育成されている能力を客観的に評価する体制が整備されているとはいえない.このように,全学的に「創造力のある実践的技術者」を育成・評価するカリキュラムの整備が必要である.
以上より,本事業ではチームティーチングとグループ学習によるモノ造型コンテスト及び,対外評価結果と作業時間を基にGPA(Grade Point Average)方式で単位認定を行う体制を構築し,全体として制作科目として整備することにより,創造力のある実践的技術者育成に資するとともに他高専へ展開可能なモデルを構築する.

2.教育システム

本事業では,「モノ造りの高専」の教育研究を基に,全学科教職員チームの指導の下に学科や学年を越えた学生チームが自ら設定したテーマに対して,知識や技術を複合融合させた「モノ造り」による解決を提案し(Step1),それをパネルと制作物としてまとめ,対外的なコンテストで実演及び提案を行い(Step2),地域(市民,産学官)による評価と作業時間を鑑みて単位を与え(Step3),提案作品を基に地域産学官の委員により複合融合力・独創力・実用力の育成の評価がなされる(Step4)形式の「対外GPA方式のモノ造コンテスト型科目」を整備する(Step5).

実施環境は,テーマの核となる高専型教育研究の学内コンペティションを行い,各校教職員からアイデアを募り,各校の校長等を選定委員として選定し(Prestep1),選定案に対して予算等の支援を行ない,教職員・学生チームでテーマとして纏め(Prestep2),学内で公開する(Prestep3)ことを通して整備する.また,コンテスト,単位認定,評価体制は,本校がGP等で構築したものを基に試行し(Prestep4),独自のものを整備する(Prestep5).
本事業は,先ず名取キャンパス中心に地元〜学科連携(Stage1)で実施し,地域〜広瀬キャンパス連携(Stage2),地方〜東北6高専連携(Stage3)へと展開し,将来的には高専型卒業制作に基づく高専独自の学士確立に資することを目指している.

3.事業の概要

図1 本取組で構築する教育システム

上記の目的のために,現採択事業の間には,以下の5項目の整備を目標とし,名取キャンパスにおける事業の整備(Stege1;Prestep1〜5,Step1〜5),広瀬キャンパスへの事業の展開(Stage2;Prestep1〜5)及び,本校CEC(CO-OP Education Center)を核として,東北6高専へ事業展開(Stege3;Prestep1〜2)可能なモデルの構築を試みる.

  1. チームラーニング環境(Step1,Frestep1・2)
  2. モノ造型コンテスト環境(Step2,Frestep3)
  3. GPA方式単位認定環境(Step3,Frestep4)
  4. 人材評価システム(Step4,Frestep4)
  5. 制作科目(Step5,Frestep5)

組織は,(1)本校校長及びCECによる全体の企画[P]に沿って各校長の環境整備等の協力を得て総括を担い,
(2)各校の卒業制作推進員会(仮)が活動の計画[P],改善[A]を担当し,
(3)各校の教務関係委員会が関連規則や科目整備[D],学生関係委員会が学生活動の管理・支援[D]を経て,
(4)担当教職員チームの下で学生チームが実行[D]し,
(5)産学官が評価[C]を担当する,全体がPDCAサイクルを成し各校独自の高専型卒業制作構築を目指しスパイラスアップ体制とする.

4.活動の概要

4.1 チームラーニング・モノ造コンテスト型科目
チームラーニング・モノ造コンテスト型科目の例として総合科目Bを紹介する.総合科目Bは,本科の3年生以上の600名の内で希望する学生を対象にしており,学生はチームで課外に自主的に環境問題を調査し,解決策をコンテストで提案し,作品・プレゼンテーションの内容が対外的に評価され,それを基に提案毎に1〜2単位が与えられる科目であり,平成20年度より導入されている.
具体的には,学科や学年を問わない学生が3人以上でチームを組み,身近で未解決の環境問題を発掘し,本校で修得した知識や技術を応用して,新規かつ実用的な解決方法を考え,その成果をパネルやモデルなどの作品としてまとめる.その作品を環境ビジネスコンテスト10に出展し,デモンストレーションやプレゼンテーションを行い,当日の参加者や外部評価委員の評価を受ける.それらの評価を基に総合的に判断し,教務委員会でそれに見合う単位の認定が為される. 以下に示すように,22年度は5件の提案が為されている.

  1. 電気自動車の改良〜よりエコを目指して〜  −ソーラーパネル搭載ボディーの制作−
  2. スマートecoエナジーライフ 野田山エコ発電プロジェクト-圧電素子を利用したエコ発電-
  3. 遮光によって室温はどのように変化するか?
  4. 遮光+蒸散によって室温はどのように変化するか
  5. 地震直前の磁界の変化の測定
4.2 モノ造型コンテスト

22年度は,環境ビジネスコンテスト10と称する,(1)総合科目B:環境をテーマとしたパネルや模型を基にしたモノ造・提案型コンテスト,(2)材料工学実験:材料と環境をテーマとする実験を基にしたパネルを用いた提案型コンテストの2部門からなるコンテストを,10月30・31日に本校高専祭で実施しており,計9チーム約60人が作品を展示している.
この取組みでは,学生チームが作品をブースに展示し,学生自身の作品を用いた1時間のプレゼンテーション時間を2日とも間設け,当日の参加者計 306人を対象に提案に対する評価アンケートを実施している.なお,当日は本校の姉妹校のドイツF.F.Bの教職員や学生も,本取組に参加している.
アンケートは,(1)複合融合力が高いもの,(2)独創力が高いもの,(3)実用力が高いものの3項目について,最も優れていると思われる作品の記号を付けてもらう形式で実施し,その評価を基に点合計して評価を行っている.
さらに,表2に示すように学生作品を基にした人材育成の外部評価も行なっており,複合融合性(目標2以上),独創性(目標2以上),実用性(目標3以上)とも当初に設定した目標を達成している.

5.おわりに

本報では,平成22年度より2年間の事業として国立高専機構に採択されている「創造力のある実践的技術者育成のための「高専型卒業制作」導入推進」に関する事業概要,事業計画および平成22年度の主な成果について述べた.今後は本取組を他学へ展開可能なモデルケースとして整備する予定である.

図2 総合科目Bの概要

表1 教材開発コンテストの結果

表2 人材育成評価の結果